Tetsu Photography

鉄道とカメラの四方山話

第32回 24-50mmf3.5-5.6

 それは、最初の「相棒」でした。

 今から四半世紀前、まだ私は学生でした。大学4年の時に、何を思い立ったか、初めての海外旅行、ソツキにインドに行きました。おおよそ1か月の大旅行、初めてでしたが、壮絶な旅行でした。

 この旅行に、用意したのはF-801と、スピードライト、及びレンズを新規に24-50mmを購入、標準のカメラケースに、レンズのはみ出しが大きかったのを思い出します。

 インド旅行は、白タクに始まり、靴泥棒、要らない物売り、要らない手伝い、雲助の赤帽、詐欺師、カメラ泥棒、ぼったくりトラベルオフィスと、日常的に誤魔化す人々に、忍耐の限度に達していましたが、決して全員がそうでは無く、良心的な人も多く、正に「サードパーティー」というものを学びました。今の、生きる指針になっています。

 いろんな写真を撮りました。ブッダガヤ、サールナート、タージマハル、他壮麗な建物も多く、今もシンメトリーで遠近法まで考えた尖塔は、忘れません。それは、多分標準の35-70mmでは撮れない写真で、28を越えた24の威力です。今も忘れません。

 旅の最後に、現地人ガイドが聞きました。「それ、幾ら?」私は今回揃えた費用を伝えると、正に「インド人もびっくり」でした。聞くと、それだけお金があれば、豪邸では無いが庶民が住む家一軒分になるそうで、当時物価はおよそ日本の10分の1、それはそれで納得しましたが、それだけ円は強い通貨であったのでした。

 その後の機材整理で、その相棒も使わなくなり、結果手放してしまいましたが、インドの思い出と共に、このレンズは何時までも心に残る一本です。

 それでは、次回をお楽しみに。

第31回 24-120mmf4

 それは、過去の焼き直しではありませんでした。

 フィルムカメラの時代、高倍率ズーム開発競争の中、一つのズームレンズが登場します。それが、24-120mmf3.5-5.6です。常用レンズとして設計され、他社の28-200mmf3.5-5.6を意識しつつも、広角側に寄った設計のレンズとなりました。後に手ブレ補正VRが入り、F6用の常用レンズとして発売されることとなりました。

 そして、デジ一の時代、ナノクリを装備し、明るさもf4一定となった、現行24-120mmf4が登場することとなりました。しかし、単に明るくなった、あるいはナノクリが入っただけではなく、デジ一に合わせ改設計したとされます。結果、現代風の写りになっています。

 値段的にも10万円台と、高倍率よりもちょっと高いですが、広角に寄ったのと、ナノクリ装備を考えれば、それほど高いものではありません。勿論望遠側には別途レンズが必要ですが、通常使う部分では、大体用が足ります。24-70mmf2.8にいきなり手を出す前に、試してみたいレンズです。私の、常用です。

 しかし、不満を言えば、やはり望遠側が120mm止まりなところ。せめて、135mmまで使えれば、もう少し勝手も良いのに、その辺どうなの、という感じです。そのため、ちょっと望遠が足りないところは、135mmf2や、他の望遠レンズを用意する必要があり、そこがちょっと不満ではあります。原設計は1990年代、正直言って、そこのとこ、何とかならないの?とは思います。技術陣の奮闘に期待したいです。

 それでは、次回をお楽しみに。

第30回 18-35mmf3.5-5.6

 それは、意外な使い方ができるレンズでした。

 まだデジ一が普及する前、フィルムの時代に、広角域の主要焦点をカバーするズームとして、普通に買った18-35mm。当時はまだ外部駆動で、18、20、24、28、35をカバーし、単焦点の持参を減らすには効果的なレンズで、当時はその程度の意識でした。

 しかし、21世紀を前に、デジ一が製造されるようになり、D1に続きD100が登場、2年目のシーズンに購入しました。その話は別として、データ処理を軽減するため素子がAPS-Cサイズで、しかしそれ専用のレンズが無かったことから、適合するレンズを既存のレンズから探す必要があり、これが一苦労でした。

 いろいろなレンズを試すうちに、18-35mmが、広角域で必要な画角があることに気付き、かなり長い時期これを常用することとなりました。今考えれば、フルサイズ換算28-50mmであり、知れば納得の一本です。ただ、望遠域が無く、それはそれで大変でした。

 以降のカメラは、レンズキットを使用したことからレンズの問題は生じず、そんな苦労も昔話となりました。今はDXフォーマットも使用せず、また元の使用法に戻っています。

 現行は、焦点距離も明るさもそのまま、AF-S化され、駆動装置を持たないデジ一でも使用可能、現在はこれを常用しますが、従前モデルはいまだ手放していません。性能的には同等で、新旧ありますが、大体性格は同じ、しかしそれぞれの違いを楽しんでいます。

 DXならば、持つべきレンズは違いますが、FXであれば、主要焦点域をカバーするこのレンズは、重宝すると思います。

 それでは、次回をお楽しみに。

第29回 35mm

 それは、なかなか使いこなせないレンズです。

 一般に50ミリを、標準と呼ぶ一眼レフシステムです。デジ一が登場し、APS-Cサイズの素子が出来ると、35mmf1.8という、「DX標準」と呼ぶべきレンズも登場しましたが、なかなかセールスに苦労しているようです。

 Fマウントレンズ、MF時代には35mmf1.4がラインナップされ、f2と選択肢があったものの、AF化でその血統は一時途絶え、f2のみでした。しかし、デジ一が出る頃に、外部駆動が使えないカメラが増え、結果AF-Sでf1.4及びf1.8の2つのレンズが出て、現在私はAFレンズを3本所有します。

 しかし、師匠も指摘したとおり、50との違いがあまり分からず、50に対するメリットはあまり大きくなく、明るさとコストパフォーマンスは圧倒的に50ミリの方が上、35mmf1.4は20万以上するもので、普段使いではありません。結果、使用頻度はあまり高いものではありません。

 やはり、35ミリは、50ミリユーザーでは無く、85ミリユーザーをターゲットにしているのでしょう。85ミリからなら明らかな変化で、分かりやすいです。

 そのため、なかなか使用するチャンスに恵まれませんが、「35が鉄板」というような場所で、使い込んでいきたいと思います。

 それでは、次回をお楽しみに。

第28回 14-24mmf2.8

 これも、究極のレンズでしょう。

 N社純正ズーム「大三元」の一角、14-24mmf2.8。設計では、不可能といわれた非球面レンズを製造するのに成功し、完成したズームです。単焦点14mmでも触れたとおり、MTF比では単焦点を上回る性能を誇り、驚異的な光学性能を実現しています。筐体は決して小さなものではありませんが、明るさからは当然のサイズです。

 鉄道写真家のN氏が、撮影中に、このレンズをカメラに装備して、地上に寝そべってカメラを構え、土手の上を通る列車を撮っている番組を見ました。プロも、広角ズームというとこのレンズを使用する、それほどのレンズになっています。

 比較すると、レンズメーカーS社が出す12-24mmf4は大きいようですが、同じく12-24mmf5.6は明るさなりの小ささで、T社の15-30mmf2.8は胴が太く、K社の16-35mmf2.8は前玉が少々小さく(これはパクり)、純正16-35mmf4は前玉が小さく落ち着いています。16-35mmf4以外は前玉が張り出しフィルター装備は不可能で、せめてバヨネットフィルターの使用出来る余地があれば救いはありましたが、それは純正以外には出来ず、純正でも廃止されつつあるシステムで、間もなく消えようとしています。

 写真は、やはりレンズメーカー製と比べてもシャープで、檻の中の野獣を解き放つ力を持っています。当然ナノクリも装備していることから、当たり前と行ってしまえばそれまでですが。

 FX14ミリを達成し、満足しそうですが、カメラメーカーC社は、単焦点11mmを実現したとのこと。勿論普通の人が買える値段ではありませんが、他社はそこまで到達しています。それを上回れ、とは言いませんが、レンズメーカーでも12ミリは達成しているので、そろそろ、その域のFX用レンズが開発されるべきではないか、と思います。「技術貴族」のN社が、そのまま黙っているのでしょうか。f5.6ででも、達成すべき目標だと思います。

 因みに、昨年創立100周年を迎えたN社が、出した記念製品の一つに、「大三元」セットがあり、ケース付きで100万円でした。その位お金があれば買っていましたが、それは残念でした。その中にも入る、14-24mmf2.8。プロのスタンダードであり、アマチュアの目標です。普段使いのレンズではありませんが、トドメを刺すレンズとして、使いたいと思います。

 それでは、次回をお楽しみに。

第27回 24-70mmf2.8G

 それは、「究極のズームレンズ」でした。

 昔は、f2.8のズームの意味が分からず、特に標準ズームは殆ど興味がありませんでした。フィルムもハイスピードフィルムを使用していたことから、低倍率で、つぶしの効かないズーム程度に思って、買う理由が分かりませんでした。

 しかし、考え方が変わったのは、本物の写真記者を見たときです。カメラはD4、レンズは24-70mmf2.8で、プロはこういう道具を使用するのだとまじまじと見せられ、圧倒されました。あの低倍率は、プロユースに耐える部分だけ使っているのだと、初めて知りました。

 実際、自分がD800を使用し、高倍率ズームで、その性能を発揮出来るかと考えたとき、ちょっとこれは、どうなのだろうと思い、機会を見つけ24-70mmf2.8と、24-120mmf4を購入しました。普段はf4ですが、遠征で多くの機材を輸送出来るときには必ず携帯し、その「トドメを刺す」画像を手に入れました。その性能は、勿論フィルム機でも、従前のデジ一でも分かるものですが、最新のフルサイズデジ一や、高画素機でこそ分かる性能もあり、自分の技術が上がったのかというほど素晴らしい写真となりました。

 現在は、非球面EDレンズ、VR機構入りの新型に切り替わりましたが、勿論従前のものでも、その性能は分かります。機会があれば、是非手に取ってみることをお薦めします。

 それでは、次回をお楽しみに。

第26回 70-300mmf5.6-6.3

 これも、とてつもない怪作でした。

 「70-300mm、何だ、何でもないじゃん。」と思いそうです。そう、通常のレンズであれば、そうでしょう。しかし、これは、ミラーレス用のズームレンズです。CX300ミリは、FX換算810ミリで、超望遠ズームです。宣伝では、800mmf5.6レンズが重量4.5キロのところ、このズームは1キロ未満で同じ世界が見える、とのことでした。確かに、既存のレンズでは見たことが無い世界です。値段的にも、約200万円に対し数万円で、普通の人でも買える値段です。

 しかも設計は、安く上げるためには既存の部品を使うのが一番で、既存の70-300のレンズ等をそのまま流用し、マウントコンバーターを着けたような設計にしてしまいそうなところ、真面目に1から設計し直し、ミラーレス専用設計にしたレンズです。そのため、極めて軽量に出来ています。なお、三脚座は別売です。

 実際使うと、本当に圧倒的な光景が広がり、私がこんな写真を撮るとは思わないような写真です。作例も、大空を飛ぶ野鳥や、関ヶ原で着雪防止用スプリンクラーを浴びるN700系で、通常で撮れない写真が撮れるレンズです。一時は、品切れになるほど売れたレンズです。

 しかし、カメラメーカーN社のミラーレスは、J5を最後に、新型が最近出ていません。全体的な縮小で厳しいのは分かりますが、DXやFXでは立て直しの目処が立ちそうなモデルが出ており、そろそろミラーレスも力を入れて、という感じです。レンズのラインナップも、そこそこのものが揃っていますので、これを生かしたシステム構築を、期待したいですね。

 それでは、次回をお楽しみに。

第25回 18.5mmf1.8

 それは、まだまだ可能性があるレンズです。

 カメラメーカーN社のミラーレス一眼、V1に引き続きV2が出て、このキットレンズに選ばれたのが、18.5mmf1.8です。通常形換算約50ミリ、イメージは標準マイクロ(マクロ)レンズです。f2を切っており、薄暮から夜間にも有効なレンズです。

 別売アクセサリーに、ドーム型のフードがあり、先が狭まる形、レンズにフィルターをしてもその上に装備出来、かつ純正の40.5ミリのキャップをそのまま填められる、そういう優れものです。ただ、色は黒しか無いのが、残念なところです。

 マイクロで、過去のフィルム用レンズのラインナップを見ると、「メディカルニッコール」というレンズがあり、これは中望遠マイクロレンズの外周に、円形のフラッシュ(スピードライト)を装備し、無影近接撮影をするというレンズで、医療関係者が患者の患部を撮影することを考えたレンズでした。

 勿論私はそれを持ってはいませんが、これを彷彿とするレンズが、トップメーカーC社から発売されました。これは、ミラーレス一眼のレンズの外周に、LEDライトを配置し、マクロ撮影時に照明付きで写せるというもので、特許を取ったかは知りませんが、他社も大いに注目するレンズでした。

 N社では、通常形の縮小版のスピードライト、および外付け形LEDライトがラインナップに入っていますが、しかしこれは光源がずれており、やはり影が出ます。その意味で、R1C1の縮小版、リング型のスピードライト及びLEDライトを思いつきますが、現在のN社のミラーレスの現状からは、足踏みしたままです。あまり、熱意を感じられません。

 しかし、もしそういったレンズを造るなら、やはり好適なのはこれ、18.5mmf1.8と思われるので、今一度ラインナップを立て直して欲しいと思います。ミラーレスで商品を撮影し、インスタにアップしたいという人もいるのを、忘れないで欲しいです。

 それでは、次回をお楽しみに。

第24回 10mmf2.8

 これは、もう少し注目されてもよいレンズです。

 N社で最初に出たミラーレス、V1のキットレンズに付属した、1NIKKOR10mmf2.8。キットレンズの選択の失敗が、V1があまり売れなかった理由で、ズームレンズを買うためにJ1を買う、という人までいる位でした。コンデジから上がってきた人には、ファインダーの意味も、単焦点の意味も分かりません。結果、V1はキットレンズをズームに変更して、V2へと切り替わっていきました。

 この、最初のキットレンズが、10ミリとのことで、FX換算27ミリ、概ね28ミリと同じ使い方をするのだろう、と思います。しかしレンズ自体は非常に薄く、カメラメーカーO社のボディレンズ程ではありませんが、パンケーキレンズ、テッサー系のレンズであるのが丸わかりで、雰囲気は45mmf2.8に似通ったものがあります。

 別売のオプションも、45mmf2.8を意識したかしていないか、ドーム型のフードに、フード専用ねじ込みキャップが用意され、外観もそのままのものです。イメージサークルの小さいCXフォーマットならではのレンズで、外観はお気に入りです。

 他の1NIKKOR単焦点に比べると明るさは2段近く落ちますが、まだズームより約1~2段明るく、薄暮から夜間にも有効なレンズですが、自動感度が使えるデジカメでは特段大きなメリットでは無く、結果「ズーム出来ない」レンズで、思ったほどのセールスにはなっていないのでしょう。やはりコンデジユーザーには通じないものでしょう。

 ミラーレスでこれを言うべきか疑問ですが、固定焦点の不便さを克服するのが、技術です。ズーミングやクロップで構図を造っている限り、「一発で決める」という技術は身につきません。もし、写真技術の上達を願うならば、やはり固定焦点にチャレンジする必要があると思います。この10ミリがその1本目に相応しいかは疑問ですが、手に取ってみることをお薦めします。

 サイズは、標準の10-30mmf3.5-5.6の半分でもあり、それほど荷物にもなりません。お供に、持ってはどうでしょうか。

 それでは、次回をお楽しみに。

第23回 32mmf1.2

 それは、とてつもない怪作でした。

 カメラメーカーN社においては、AF化、及び同時期に行われたCPU連動により、消えてしまったf1.2のレンズ。恐らく、制御コンピューターの設計上、始まりをf1.4で設計したのであろうと思いますが、結果AFレンズではf1.2はラインナップに入らず、現在に至ります。確かにf1.2では、1/3段上という中途半端であり、また周辺光量を考えるとあり得る設定です。

 しかし、時代はデジタルカメラ、一眼レフを小型化したミラーレスが登場し、その小さくなった素子に対応した、新たなレンズが登場します。それが、32mmf1.2です。いわゆるCXフォーマットであり、焦点距離は2.7倍換算で、FX85mmに相当するレンズです。則ち、女性のポートレートを撮るために、最も明るいf1.2で、かつナノクリまで装備し、「美しい女性を美しく写す」ためのレンズとなっています。写真は、明るさに起因するスピードから、確かに今まで見たこと無い写真になります。

 ただ問題は、ミラーレス一眼のユーザーに、それがどれほどのアピールになるのでしょうか。ミラーレスのユーザーは、デジ一を常用しサブで使う人と、コンデジからレンズ交換のメリットで上がってくる人の、この二つが中心です。デジ一を常用する人はある程度単焦点を理解出来ますが、コンデジユーザーは、多分単焦点を理解出来ないと思います。「単焦点ならレンズが明るい」というメリットも、自動感度設定で小さくなっており、そういう人には、「ズーム出来ない不便なレンズ」程度にしか映らないのでしょう。結果、CXの単焦点レンズは、セールスに苦労しているようです。

 DLシリーズの販売計画撤回から、ミラーレスに注ぎ込むべき資源が減り、J5以降の新型ミラーレスが出ないのは、ある意味仕方ないとも思います。しかし、D5、D500、D850と、セールス立て直しの陣容が揃い、そうすると、そろそろミラーレスも力を入れて欲しいと思います。

 ここ数年のスマホのカメラ性能の格段の進歩から、コンデジは市場が10分の1、デジ一も半減とのことで、大変なのは分かりますが、ミラーレスは4分の3でとどまっており、ここに資源を集中しセールスを立て直せば、従前のようには簡単ではありませんが、全体的に良くなるのでは、と思います。やはり、スマホで撮れない写真があるから、カメラは必要なのです。

 最後に、CXでf1.2が処理出来るなら、今からでも遅くない、DXやFXでもf1.2が使えるようにして欲しいです。多分、出せるレンズは50mmでしょうから、ナノクリもつけて、というのを期待したいですね。

 それでは、次回をお楽しみに。