Tetsu Photography

鉄道とカメラの四方山話

第3回 58mm

 それは、名作の単なる焼き直しではありませんでした。

 かつて、夜景を撮るために設計された、名レンズがありました。それは、58mmf1.2、夜想曲ノクターン)から名を取った、NoctNikkorという名を冠したレンズでした。昔は、色々な名を冠したレンズがありました。

 夜景を綺麗に撮るためには、照明の点光源が点に写る必要がありますが、それが崩れる原因である各種コマフレアーを解決する必要があり、特に大口径のレンズにはそれが発生しやすい傾向にありました。そのため、非球面レンズを搭載、その解決法としました。

 しかし、今のような量産非球面レンズの技術は無く、結局精研削非球面レンズを採用したために、非常に高価なレンズとなりました。手取金額では、今の私の月収は当時の管理職と同程度ですが、その当時の管理職の月の手取りとほぼ同じ金額、1か月家族まで飲まず食わずとはいかないでしょうから、極々限られた人、カメラが趣味で、且つそれだけのレンズを買える収入がある人のみのレンズでした。貴重さが分かるでしょうか。

 しかし、AF化が進み、レンズラインナップの整理で、手間がかかり、しかもそれほど数が出ないレンズですから、いつの間にかその焦点距離と共に消えてしまいました。

 時は平成、デジタル一眼が一般的となり、フィルム機が生産を中止しつつある現在に、まさかその復活があるとは、誰が思ったでしょうか。しかも、それを念願の50ミリでは無く、58ミリとは、だれも思わないでしょう。しかし、そのレンズは完成しました。

 恐らく、CPU連動がf1.2に対応していないのでf1.4となったのでしょうが、焦点距離はともかく、現在の非球面レンズ製造技術でかなり可能となった、各種収差、及びフレアーの解消で、単に復活では無く、新生58ミリ大口径が誕生しました。

 標準系単焦点では初となるナノクリも施され、デジタル時代の新レンズで、確かに使ってみると、勿論昼間も良いですが、特に夕方以降に威力を発揮する気がします。本当に、かなり驚きの画像です。手放すなんて余程のことです。

 夢は、クラシックでも、オリジナルのノクトを手に入れることでしょうか。オークションでも25万円を下回ることは無く、それだけの金額をそのために持っているのは、年に2度位でしょうか。オークションは、遊ばせる金がある人には楽しいものです。

 でも、標準50ミリで、ナノクリは無いのでしょうか。現行と併売でも、見込みがある気がするのですが、どうでしょうか。

 それでは、次回をお楽しみに。