Tetsu Photography

鉄道とカメラの四方山話

第23回 32mmf1.2

 それは、とてつもない怪作でした。

 カメラメーカーN社においては、AF化、及び同時期に行われたCPU連動により、消えてしまったf1.2のレンズ。恐らく、制御コンピューターの設計上、始まりをf1.4で設計したのであろうと思いますが、結果AFレンズではf1.2はラインナップに入らず、現在に至ります。確かにf1.2では、1/3段上という中途半端であり、また周辺光量を考えるとあり得る設定です。

 しかし、時代はデジタルカメラ、一眼レフを小型化したミラーレスが登場し、その小さくなった素子に対応した、新たなレンズが登場します。それが、32mmf1.2です。いわゆるCXフォーマットであり、焦点距離は2.7倍換算で、FX85mmに相当するレンズです。則ち、女性のポートレートを撮るために、最も明るいf1.2で、かつナノクリまで装備し、「美しい女性を美しく写す」ためのレンズとなっています。写真は、明るさに起因するスピードから、確かに今まで見たこと無い写真になります。

 ただ問題は、ミラーレス一眼のユーザーに、それがどれほどのアピールになるのでしょうか。ミラーレスのユーザーは、デジ一を常用しサブで使う人と、コンデジからレンズ交換のメリットで上がってくる人の、この二つが中心です。デジ一を常用する人はある程度単焦点を理解出来ますが、コンデジユーザーは、多分単焦点を理解出来ないと思います。「単焦点ならレンズが明るい」というメリットも、自動感度設定で小さくなっており、そういう人には、「ズーム出来ない不便なレンズ」程度にしか映らないのでしょう。結果、CXの単焦点レンズは、セールスに苦労しているようです。

 DLシリーズの販売計画撤回から、ミラーレスに注ぎ込むべき資源が減り、J5以降の新型ミラーレスが出ないのは、ある意味仕方ないとも思います。しかし、D5、D500、D850と、セールス立て直しの陣容が揃い、そうすると、そろそろミラーレスも力を入れて欲しいと思います。

 ここ数年のスマホのカメラ性能の格段の進歩から、コンデジは市場が10分の1、デジ一も半減とのことで、大変なのは分かりますが、ミラーレスは4分の3でとどまっており、ここに資源を集中しセールスを立て直せば、従前のようには簡単ではありませんが、全体的に良くなるのでは、と思います。やはり、スマホで撮れない写真があるから、カメラは必要なのです。

 最後に、CXでf1.2が処理出来るなら、今からでも遅くない、DXやFXでもf1.2が使えるようにして欲しいです。多分、出せるレンズは50mmでしょうから、ナノクリもつけて、というのを期待したいですね。

 それでは、次回をお楽しみに。