Tetsu Photography

鉄道とカメラの四方山話

第35回 D100

 それは、初めて普通の人でも持てるデジタル一眼でした。

 「買取価格6,000円」これが、このカメラの、今の評価額です。現在の最新のカメラからは見劣りし、技術的にもその程度の評価なのは仕方ありません。しかしこれは、持っている人がほとんどいませんので、中古で出たら、欲しい人は即買いでしょう。頻度的にも、ほとんど無いものです。

 一般のN社ユーザーなら、デジ一はD70が最初でしょう。恐らくほとんどのユーザーが手にしたこのカメラ、一般に普及する始まりでした。つまりそれまでは、デジ一は一部のユーザーのみが持つ、特権的なカメラでした。D70がデビューするまでの2年間は、優越感に浸っていました。

 市販価格は約25万、ちょっとカメラに注ぎ込んでも良い人なら何とか買える程度の金額、普及価格ではありません。しかし、それ以前のデジ一、例えばD1などは、市販価格が50万で、およそ写真を業とする人以外には買えない代物で、それを思えばまだまだ手が届きそうな一台に仕上がっていました。ターゲットはD1のサブ、およびハイアマチュアで、D1はIEEE1394接続でしたが、D100はUSBになり、現在のデジ一とほぼ同じ仕様に出来上がっています。D1を中古で買うときは、接続には注意が必要です。

 持っていれば自慢出来る一台でしたが、しかし撮像素子がAPS-Cサイズで、これに適合するレンズは、苦心が必要でした。いわゆるDXNikkorは、D70以降からラインナップができ始め、それまでは無かったことから、特に広角側は困難を極めました。そこで、18-35mmを使ったりしたわけで、専用レンズを使用出来たD70は、幸運です。

 D70デビューで購入し、D100は宝刀ですので乾燥庫入り、その後顧みることは殆どありませんでしたが、以降のデジ一は大半を処分した中、D100だけは現在も手元にあります。リセールバリューが無いのも事実ですが、その時代から持っていた記念でもあり、譲る気はしません。やはり、記念すべき一台ですから。

 それでは、次回をお楽しみに。

第34回 F100

 それは、今でも私の主力です。

 初めてのカメラ、F-801から、次のカメラを検討中、F90シリーズを物色していました。そこで、カメラ店で、相談をしてみました。

 その答えは、こうでした。「F100の方が、良いよ。」

 「F5ジュニア」というキャッチコピーでデビューした、F100。中級AFフィルムカメラの代表格、F5の縦グリップを取り除いたようなサイズで、まさに「ジュニア」、確かにF90と比べても進化したモデルです。しかし当然値段も高く、あの当時に20万前後したのか。F4ベースで、モデル末期であったF90と比べれば、高いのは当然です。しかし、それが正解であったことが、後に証明されました。

 CPU連動しない機械式のレンズにも対応し、露出計連動レバーも装備しますが、非Aiには対応せず、可倒式改造も出来ず、旧来のレンズは使えません。もしそれを望むなら、やはり一桁機を使うしかありません。

 購入から20年、予備機を目論んだオークションでの購入は4台を数え、1台は不正改造のババでしたが、以外は完動品で、現在も現役です。露出計等半導体も駄目になっておらず、いまでもほぼ正確な露出となっています。

 オークションを見ても、F90シリーズはあまり見かけませんが、F100は散見され、今でも代替機は手に入ります。今思っても、やはり正解であったのだと思います。

 ただ、現在はスクリーン等の製造は中止となり、新製部品を手に入れるのは不可能となりました。やはり、新製部品を望むのならば、もうF6しかありません。

 しかし、それを勘案しても、今でも使えるのは強みです。コレクションには不向きですが、現在も使うことを考えれば、やはりまたとない一台でしょう。

 それでは、次回をお楽しみに。

第33回 35-70mmf3.5-5.6

 これが、最初の1本でした。

 父のアメリカ長期出張の時に、買ってこなければ帰国罷り成らぬと、半ば脅して買わせてしまった、F-801(対米輸出バージョンで、正確には機番が違います)。カメラにお金を注ぎ込ませてしまったので、レンズはしょぼい2倍ズーム、35-70ミリとなってしまいました。なお、その前には、広角コンバーターが着いており、父はカメラのことが分からなかったようです。

 ただその時に、C社を買うよう言っておけば、そのまま安泰でしたが、それを思いつかず「NかM」と言ってしまい、結果N社になりました。もし、その時M社であったならば、多分今頃はS社乗り換えも無く、写真を止めていたでしょう。

 以降、永くその1本のみで、別のレンズを買うことも無く、一眼レフの特徴を使いこなすことも無く、続いていました。正直、プラスチックでレンズを造るM社の方がレンズは安く、高級硝材をふんだんに使用して造ったN社のレンズは高く、父を恨んでいましたが、長い目で見れば、正解でした。

 本当に平凡な1本で、「ズームが出来ます」レベルのものでした。しかし、それまでMFズームレンズの主流であった、一挙動で持ちかえず操作出来る押し引きでズームするレンズでは無く、ズームリングとピントリングが独立した、以降のAFズームの基本となる設計のレンズでした。今思うと、そういう偉大なレンズであったのだと、改めて感じます。

 後に、FM10を購入、こちらは信号式露出計のみのフルマニュアルですが、それに付属するキットレンズは、これのMF版、富士山も無いMFレンズです。50mmf2でも良い気はしますが、現在生産が無く、ズームも出来る初心者用MFカメラとなっています。

 その後、レンズが増え、保存法も進歩し、機材整理もしましたが、今でもその1本は保存されています。やはり、原点だからでしょう。今後とも、持っていたい1本です。

 それでは、次回をお楽しみに。

第32回 24-50mmf3.5-5.6

 それは、最初の「相棒」でした。

 今から四半世紀前、まだ私は学生でした。大学4年の時に、何を思い立ったか、初めての海外旅行、ソツキにインドに行きました。おおよそ1か月の大旅行、初めてでしたが、壮絶な旅行でした。

 この旅行に、用意したのはF-801と、スピードライト、及びレンズを新規に24-50mmを購入、標準のカメラケースに、レンズのはみ出しが大きかったのを思い出します。

 インド旅行は、白タクに始まり、靴泥棒、要らない物売り、要らない手伝い、雲助の赤帽、詐欺師、カメラ泥棒、ぼったくりトラベルオフィスと、日常的に誤魔化す人々に、忍耐の限度に達していましたが、決して全員がそうでは無く、良心的な人も多く、正に「サードパーティー」というものを学びました。今の、生きる指針になっています。

 いろんな写真を撮りました。ブッダガヤ、サールナート、タージマハル、他壮麗な建物も多く、今もシンメトリーで遠近法まで考えた尖塔は、忘れません。それは、多分標準の35-70mmでは撮れない写真で、28を越えた24の威力です。今も忘れません。

 旅の最後に、現地人ガイドが聞きました。「それ、幾ら?」私は今回揃えた費用を伝えると、正に「インド人もびっくり」でした。聞くと、それだけお金があれば、豪邸では無いが庶民が住む家一軒分になるそうで、当時物価はおよそ日本の10分の1、それはそれで納得しましたが、それだけ円は強い通貨であったのでした。

 その後の機材整理で、その相棒も使わなくなり、結果手放してしまいましたが、インドの思い出と共に、このレンズは何時までも心に残る一本です。

 それでは、次回をお楽しみに。

第31回 24-120mmf4

 それは、過去の焼き直しではありませんでした。

 フィルムカメラの時代、高倍率ズーム開発競争の中、一つのズームレンズが登場します。それが、24-120mmf3.5-5.6です。常用レンズとして設計され、他社の28-200mmf3.5-5.6を意識しつつも、広角側に寄った設計のレンズとなりました。後に手ブレ補正VRが入り、F6用の常用レンズとして発売されることとなりました。

 そして、デジ一の時代、ナノクリを装備し、明るさもf4一定となった、現行24-120mmf4が登場することとなりました。しかし、単に明るくなった、あるいはナノクリが入っただけではなく、デジ一に合わせ改設計したとされます。結果、現代風の写りになっています。

 値段的にも10万円台と、高倍率よりもちょっと高いですが、広角に寄ったのと、ナノクリ装備を考えれば、それほど高いものではありません。勿論望遠側には別途レンズが必要ですが、通常使う部分では、大体用が足ります。24-70mmf2.8にいきなり手を出す前に、試してみたいレンズです。私の、常用です。

 しかし、不満を言えば、やはり望遠側が120mm止まりなところ。せめて、135mmまで使えれば、もう少し勝手も良いのに、その辺どうなの、という感じです。そのため、ちょっと望遠が足りないところは、135mmf2や、他の望遠レンズを用意する必要があり、そこがちょっと不満ではあります。原設計は1990年代、正直言って、そこのとこ、何とかならないの?とは思います。技術陣の奮闘に期待したいです。

 それでは、次回をお楽しみに。

第30回 18-35mmf3.5-5.6

 それは、意外な使い方ができるレンズでした。

 まだデジ一が普及する前、フィルムの時代に、広角域の主要焦点をカバーするズームとして、普通に買った18-35mm。当時はまだ外部駆動で、18、20、24、28、35をカバーし、単焦点の持参を減らすには効果的なレンズで、当時はその程度の意識でした。

 しかし、21世紀を前に、デジ一が製造されるようになり、D1に続きD100が登場、2年目のシーズンに購入しました。その話は別として、データ処理を軽減するため素子がAPS-Cサイズで、しかしそれ専用のレンズが無かったことから、適合するレンズを既存のレンズから探す必要があり、これが一苦労でした。

 いろいろなレンズを試すうちに、18-35mmが、広角域で必要な画角があることに気付き、かなり長い時期これを常用することとなりました。今考えれば、フルサイズ換算28-50mmであり、知れば納得の一本です。ただ、望遠域が無く、それはそれで大変でした。

 以降のカメラは、レンズキットを使用したことからレンズの問題は生じず、そんな苦労も昔話となりました。今はDXフォーマットも使用せず、また元の使用法に戻っています。

 現行は、焦点距離も明るさもそのまま、AF-S化され、駆動装置を持たないデジ一でも使用可能、現在はこれを常用しますが、従前モデルはいまだ手放していません。性能的には同等で、新旧ありますが、大体性格は同じ、しかしそれぞれの違いを楽しんでいます。

 DXならば、持つべきレンズは違いますが、FXであれば、主要焦点域をカバーするこのレンズは、重宝すると思います。

 それでは、次回をお楽しみに。

第29回 35mm

 それは、なかなか使いこなせないレンズです。

 一般に50ミリを、標準と呼ぶ一眼レフシステムです。デジ一が登場し、APS-Cサイズの素子が出来ると、35mmf1.8という、「DX標準」と呼ぶべきレンズも登場しましたが、なかなかセールスに苦労しているようです。

 Fマウントレンズ、MF時代には35mmf1.4がラインナップされ、f2と選択肢があったものの、AF化でその血統は一時途絶え、f2のみでした。しかし、デジ一が出る頃に、外部駆動が使えないカメラが増え、結果AF-Sでf1.4及びf1.8の2つのレンズが出て、現在私はAFレンズを3本所有します。

 しかし、師匠も指摘したとおり、50との違いがあまり分からず、50に対するメリットはあまり大きくなく、明るさとコストパフォーマンスは圧倒的に50ミリの方が上、35mmf1.4は20万以上するもので、普段使いではありません。結果、使用頻度はあまり高いものではありません。

 やはり、35ミリは、50ミリユーザーでは無く、85ミリユーザーをターゲットにしているのでしょう。85ミリからなら明らかな変化で、分かりやすいです。

 そのため、なかなか使用するチャンスに恵まれませんが、「35が鉄板」というような場所で、使い込んでいきたいと思います。

 それでは、次回をお楽しみに。

第28回 14-24mmf2.8

 これも、究極のレンズでしょう。

 N社純正ズーム「大三元」の一角、14-24mmf2.8。設計では、不可能といわれた非球面レンズを製造するのに成功し、完成したズームです。単焦点14mmでも触れたとおり、MTF比では単焦点を上回る性能を誇り、驚異的な光学性能を実現しています。筐体は決して小さなものではありませんが、明るさからは当然のサイズです。

 鉄道写真家のN氏が、撮影中に、このレンズをカメラに装備して、地上に寝そべってカメラを構え、土手の上を通る列車を撮っている番組を見ました。プロも、広角ズームというとこのレンズを使用する、それほどのレンズになっています。

 比較すると、レンズメーカーS社が出す12-24mmf4は大きいようですが、同じく12-24mmf5.6は明るさなりの小ささで、T社の15-30mmf2.8は胴が太く、K社の16-35mmf2.8は前玉が少々小さく(これはパクり)、純正16-35mmf4は前玉が小さく落ち着いています。16-35mmf4以外は前玉が張り出しフィルター装備は不可能で、せめてバヨネットフィルターの使用出来る余地があれば救いはありましたが、それは純正以外には出来ず、純正でも廃止されつつあるシステムで、間もなく消えようとしています。

 写真は、やはりレンズメーカー製と比べてもシャープで、檻の中の野獣を解き放つ力を持っています。当然ナノクリも装備していることから、当たり前と行ってしまえばそれまでですが。

 FX14ミリを達成し、満足しそうですが、カメラメーカーC社は、単焦点11mmを実現したとのこと。勿論普通の人が買える値段ではありませんが、他社はそこまで到達しています。それを上回れ、とは言いませんが、レンズメーカーでも12ミリは達成しているので、そろそろ、その域のFX用レンズが開発されるべきではないか、と思います。「技術貴族」のN社が、そのまま黙っているのでしょうか。f5.6ででも、達成すべき目標だと思います。

 因みに、昨年創立100周年を迎えたN社が、出した記念製品の一つに、「大三元」セットがあり、ケース付きで100万円でした。その位お金があれば買っていましたが、それは残念でした。その中にも入る、14-24mmf2.8。プロのスタンダードであり、アマチュアの目標です。普段使いのレンズではありませんが、トドメを刺すレンズとして、使いたいと思います。

 それでは、次回をお楽しみに。

第27回 24-70mmf2.8G

 それは、「究極のズームレンズ」でした。

 昔は、f2.8のズームの意味が分からず、特に標準ズームは殆ど興味がありませんでした。フィルムもハイスピードフィルムを使用していたことから、低倍率で、つぶしの効かないズーム程度に思って、買う理由が分かりませんでした。

 しかし、考え方が変わったのは、本物の写真記者を見たときです。カメラはD4、レンズは24-70mmf2.8で、プロはこういう道具を使用するのだとまじまじと見せられ、圧倒されました。あの低倍率は、プロユースに耐える部分だけ使っているのだと、初めて知りました。

 実際、自分がD800を使用し、高倍率ズームで、その性能を発揮出来るかと考えたとき、ちょっとこれは、どうなのだろうと思い、機会を見つけ24-70mmf2.8と、24-120mmf4を購入しました。普段はf4ですが、遠征で多くの機材を輸送出来るときには必ず携帯し、その「トドメを刺す」画像を手に入れました。その性能は、勿論フィルム機でも、従前のデジ一でも分かるものですが、最新のフルサイズデジ一や、高画素機でこそ分かる性能もあり、自分の技術が上がったのかというほど素晴らしい写真となりました。

 現在は、非球面EDレンズ、VR機構入りの新型に切り替わりましたが、勿論従前のものでも、その性能は分かります。機会があれば、是非手に取ってみることをお薦めします。

 それでは、次回をお楽しみに。

第26回 70-300mmf5.6-6.3

 これも、とてつもない怪作でした。

 「70-300mm、何だ、何でもないじゃん。」と思いそうです。そう、通常のレンズであれば、そうでしょう。しかし、これは、ミラーレス用のズームレンズです。CX300ミリは、FX換算810ミリで、超望遠ズームです。宣伝では、800mmf5.6レンズが重量4.5キロのところ、このズームは1キロ未満で同じ世界が見える、とのことでした。確かに、既存のレンズでは見たことが無い世界です。値段的にも、約200万円に対し数万円で、普通の人でも買える値段です。

 しかも設計は、安く上げるためには既存の部品を使うのが一番で、既存の70-300のレンズ等をそのまま流用し、マウントコンバーターを着けたような設計にしてしまいそうなところ、真面目に1から設計し直し、ミラーレス専用設計にしたレンズです。そのため、極めて軽量に出来ています。なお、三脚座は別売です。

 実際使うと、本当に圧倒的な光景が広がり、私がこんな写真を撮るとは思わないような写真です。作例も、大空を飛ぶ野鳥や、関ヶ原で着雪防止用スプリンクラーを浴びるN700系で、通常で撮れない写真が撮れるレンズです。一時は、品切れになるほど売れたレンズです。

 しかし、カメラメーカーN社のミラーレスは、J5を最後に、新型が最近出ていません。全体的な縮小で厳しいのは分かりますが、DXやFXでは立て直しの目処が立ちそうなモデルが出ており、そろそろミラーレスも力を入れて、という感じです。レンズのラインナップも、そこそこのものが揃っていますので、これを生かしたシステム構築を、期待したいですね。

 それでは、次回をお楽しみに。