Tetsu Photography

鉄道とカメラの四方山話

第13回 55mmf1.2

 それは、技術発展の過程で生まれたレンズです。

 レンジファインダーの時代、標準レンズは50mmで、f1.2もありましたが、一眼レフの時代、ミラーボックスのために、50mmf1.2というレンズは製造出来なくなり、技術的課題として、永く残っていました。

 そこで、50mmに近い焦点距離で、同様のレンズを造れないかと出来たのが、まず58mmで、これは「ノクトニッコール」として、非球面レンズも使用して、実現しました。

 続いて出来たのが、55mmで、これは非球面は無いようですが、苦心の末f1.2が実現しました。これが、今回の話題です。

 確かに、5mm(正確には3.4mm)焦点距離が長いわけですが、当時の技術のほぼ限界で、これを縮めるのに長い時間を要しました。いわば50mmの身代わりで、実際に50mmf1.2が実現すると、販売が終了となりました。個人的には、50mmがあっても、併売すれば良いのでは?とも思うのですが、結局は身代わりなので、それをよしとはしなかったようです。

 そして、その身代わりの55mmが、我が家にやって来ました。現在、撮影テストの最中です。

 3.4mmの差は、それほどに感じませんが、それは58だって同じです。細かくいえば、違います。ただ、AF化後に整備が始まった私のコレクションでは、最も明るいレンズとなりました。

 今、この焦点距離でレンズを出しても、恐らく商売にはならないでしょう。あくまで50の代わりであり、それ自体に意味がある焦点距離では無いからです。多分、多くのユーザーがそう思うでしょう。

 ただ、かつてはこういうレンズがあった、と思うと、やはり欲しいものです。記念すべきレンズとして、50との違いを楽しみながら、使っていきたいと思います。

 それでは、次回をお楽しみに。

第12回 18mmf4

 我が家に、銘玉がやって来ました。

 「千夜一夜」を読んで、俄然欲しくなった18mmF4。MFレンズで、歴史的なレンズとのことで、オークションを物色中に引っ掛かったレンズを、落札、手に入れました。

 AF18mmf2.8を持っているので予想していましたが、巨大な前玉に、更に続く大型のフィルター枠(φ86mm)で、開いた傘のようです。中古としては少々高いものでしたが、手に入れた満足感は代えがたい物です。

 早速デジ一とF6で試験を行いましたが、AF機でピント合わせも久しぶりで、少々勘が狂っていましたが、F6は斜めスプリットなので、MF時代の勘を取り戻しました。個人的には斜めスプリットにマイクロがあれば完璧だと思うのですが、スプリットマイクロは横で、縦棒のみ対応します。まあ仮にAFだったとしても、今は通常親指AFですので、置きピン同様事前に合わせているので、同じなのですが。

 「千夜一夜」では、「姿を消した幻のレンズ」とも書かれ、実際に、ボーナス時期にも検索で全4件しか無かった、レアなレンズでもあります。「分かる人には分かる」レンズなのでしょう。

 今後も、普段使いのレンズには出来ませんが、時々に普段見られない世界を撮るために、使いたいと思います。

 それでは、次回をお楽しみに。

第11回 28mm

 それは、今も痛恨のレンズです。

 MFの時代から、代表的な広角レンズとして挙げられる、28mm。純正も、サードパーティーも、多数のラインナップを揃えている焦点距離でした。

 フィルムAFの時代、Fマウント純正f1.4を揃えているのは、50mm、85mm、そしてこの28mmで、50と85は保有していたこともあり、この高価な28mmの購入を永く望んでいました。しかし、新型デジ一に注目するあまり、カメラ1強の時代、18mmf2.8などと同様にラインナップの整理があり、そう数も出ないこのレンズは販売中止、結果手に入れることが出来なくなってしまいました。

 f1.4に手を出す前には、必ずもっと軽いレンズで技術を磨く必要があります。f2.8はそういうレンズで、当然所持しています。ズームを多用するようになった今でも、メインバッグにf2.8は必ず入っています。

 後に、カメラの装備上の理由で、AF-Sレンズのラインナップが増えましたが、28mmはf1.8でナノクリが装備され、余程嫌っているのかとも思いました。そして現在、遂に新型のf1.4がデビューしましたが、電磁絞りのEレンズで、フィルム機は対応せず、残念です。

 旧f1.4は市販が無く、オークションでしか手に入りませんが、状態にもよりますが大体20万円前後で出ており、遊ばせるだけの金のある人のみ買える物です。定価が20数万であり、定価でも当然と言えば当然ですが。ノクトほどではありませんが、やはり入手が困難な1本です。無理してでも手に入れるべき1本でした。

 それでは、次回をお楽しみに。

第10回 Micro55mmf2.8

 そのレンズがラインナップにあったとは、全く知りませんでした。

 MFのMicro55mmf3.5から、f2.8に進化、AF化で60mmf2.8、そして現行のAF-S60mmになるわけですが、実は、AF Micro60mmの前に、短期間AF Micro55mmf2.8が製造され、それが希少な1本となっていることを知り、早速手に入れ、試写しました。

 サイズ的には60mmf2.8Dとほぼ同サイズ、MF55mmに専用エクステンションチューブ装備よりは短いですが、等倍では総延長が長く伸び、MF55mmにエクステンションチューブを装備したものとほぼ同じ位になります。MF55mmf2.8も調子が悪いながら手に入れ、一応のラインナップ完成となっています。

 手に入れた1本は、年式を感じさせない極上の1本で、光学系も完璧、すぐにお気に入りになってしまいました。MF55mmが手を入れる必要があるので、よりそれを強く感じます。

 ちょっと使い込まれた1本は、そこそこの値段で出ているようなので、欲しい気もしますが、同じレンズを2本とは、少々勿体ない。使い方を考えながら、手にしたい1本です。

 それでは、次回をお楽しみに。

第9回 18mmf2.8

 それは、史上初のレンズでした。

 18mmというと、多くの人がf4を思い浮かべ、それだけ記憶に残る銘レンズであったことが分かります。これも、間もなく手に入る予定で、MF時代の名作と謳われるべきでしょう。

 今回は、そのAF版となっている、18mmf2.8です。Fマウントとして、史上初の量産型非球面レンズである、ガラスモールド非球面レンズを最初に採用したレンズです。

 それまでは、非球面レンズは精研削非球面レンズのみで、量産にはあまり向かない、高級レンズのみに採用される技術であり、結果それはものすごく高価なものとなっていました。

 それを、普通に買えるレンズに採用するためには、大量生産ができる技術を開発する必要があります。その答えが、熱で柔らかくなったガラスを金型で整形する、ガラスモールド非球面レンズでした。

 結果、それだけの非球面を含むレンズを、普通に手に届くものとした、歴史に残るレンズとなっています。

 しかし、これだけの力作でしたが、カメラ1強の時代に、セールスを記録しないことを理由に、いつのまにかラインナップから消えてしまい、品番廃止時に、慌てて購入したのを覚えています。その後も家電量販店で忘れ去られたように置いてあったのを見たことがありますが、あれをクレジットカードで買っておいて、今オークションで売りさばいたらどの位儲かったのか、惜しい気がします。

 Fマウントも、プロユースを相当取り戻しており、カメラも多極化と言うべきでしょうが、そんな今、当時の設計のままでいいから、復活して欲しいレンズの一つではないかと思います。確かに18mmはズームでもカバーする焦点距離ですが、やはり固定焦点も欲しいです。再検討は、できないのでしょうか。

 それでは、次回をお楽しみに。

第8回 45mm

 それは、AF化できなかったレンズです。

 恐らく、Fマウントで最後のMFフィルム一眼レフであった、FM3A。マニュアル露出のFMシリーズの続番で、しかし絞り優先AFが入り、かつ当時既に導入されていたCPU連動に対応していました。

 CPU連動レンズは、ほとんどAFレンズでしたが、2つの例外がありました。一つが「ゴーヨン」(500mmf4)、もう一つがこのレンズ、45mmf2.8で、FM3Aのキットレンズでもありました。

 私はFM3Aは所有していませんが、このレンズが気になり、シルバーが主流の所、ブラックを購入、初のFマウントMFレンズとなりました。シルバーもそのうち、と思っていたところ、生産中止となり、現在に至ります。今でも、できれば手に入れたいと思っています。

 本当に、非常に薄いレンズで、多分Fマウントでは最薄のレンズと思われます。あまりに薄いのでAFには対応出来ず、CPUも魔法を使って入れたのでは、と思うほどの大きさです。もし仮にAF化するならば、大きな筐体を設けないと不可能な構造で、それをする位ならこのままで良いような気もします。

 ボディキャップの代わりにもなろうレンズで、実際にはそんな贅沢なことはしませんが、巨艦大砲主義の人達とは一線を画す一本となっています。

 しかし、これには、元となるレンズ、GNニッコールがある。最終的には、ここまで手に入れて、やっと完成のような気がします。

 最後に、写真は、道具の大きさで撮るのでは無く、心で撮るのだと思います。確かにコレクション癖は問題ですが、それらが生きる写真を撮りたいと思います。

 それでは、次回をお楽しみに。

第7回 50mm#2

 そのレンズは、従前のレンズと一線を画していました。

 オークションで見かけた、Ai-s50mmf1.8。売り文句は、「パンケーキレンズ」とのこと。MFレンズでありながら、富士山が無く、フォトミックでは使用出来ないレンズでした。ただ、私のお気に入りに、Ai-P45mmf2.8があり、これも完全なパンケーキレンズで、相方にも良いと思い、購入しました。

 AF50mmf1.8Dと比較しても長さは半分、AF-S50mmf1.8Gに比べれば4分の1で、これも巨艦大砲主義者には受け付けないレンズです。思うのですが、写真は道具の見た目で撮るのでしょうか。

 Ai-sであることもあり、現在はF3の事実上のボディキャップでもあり、軽量で薄いレンズは、新たな喜びとなっています。

 考えてみると、f1.8でこのサイズであるなら、f2ならもっと軽量にできそうですが、50mmでその明るさは商品競争力が無く、商売は成り立たないようです。やはり、買う人があっての商売です。

 パンケーキレンズは、これと45mmの新旧だけで、他にはありません。AFも入れられないサイズですが、これらのレンズが今後のレンズのあり方に一石を投じると面白いのですが、何れも現在生産されておらず、それもなさそうです。

 確かに「レンズコレクター」という考えはありますが、使ってナンボとも思うので、もっと手に馴染むまで使用したいと思います。

 それでは、次回をお楽しみに。

第6回 50mm#1

 それは、古くて新しいレンズです。

 かつてMFレンズの時代には、f2から始まり、f1.8、f1.4、f1.2と各種存在した、「標準レンズ」50mm。ドイツで、初期のカメラのレンズとなったときに、50mmというレンズが焦点距離51.6mmであったことに範を取り、現在もその伝統が続いています。

 ズームのような便利さは無いですが、レンズの数も少ないことから、安価で軽量で明るいレンズで、もっと使ってもいいレンズですが、なかなか現場では見かけないレンズです。多分、多くの人が馬鹿にしているのでしょう。

 室内では絶対的なレンズ、また夜間の撮影には重宝するレンズで、使い方は万能、絞れば広角風に、開けば望遠風に写り、撮影技術の基本となるレンズです。しかし筐体の小ささが、所有欲を満たさない。巨艦大砲主義の人は、興味も示さないのでしょう。

 正直、単焦点焦点距離が変更出来ないので、それをカバーする技術が必要です。ズームレンズには無い苦労ですが、それが無いと撮影技術の発展は無く、やはり最初に持つべき単焦点レンズでしょう。

 MF時代にはf1.2まで発展したレンズですが、AF時代にはf1.2はラインナップには入らず(周辺光量の関係か、システム上の理由か?)、f2では商品としての競争力が無く廃止、f1.4とf1.8のみで、それぞれDとAF-Sがラインナップされます。

 実際、f1.4とf1.8のどちらにすべきか、悩ましいですが、勿論f1.4は素晴らしいですが、値段では半分のf1.8でも十分で、ステップアップは不満を感じてからでも良いとは思います。

 なお、デジ一ではAF-SでないとAFが使えない機種もありますが、そうではない、外部駆動の出来るカメラであれば、f1.8Dが、接写等にも使え、MF時代からのお薦めのようです。逆向きにも使用可、拡張性からもお薦めです。

 写真技術を真剣に学ぶ写真学校では、技術の巧拙を計るためフィルムカメラで、AF不可、自動露出では技術が身につかないという理由から禁止、そこで教材として用意させるのは、F3とのことです。そういった目的では、おそらく50mmで技術を計測するでしょうから、それがモロに出る、MFレンズでf2であれば、完璧な感じがします。商品競争力は難しいですが、「教習用レンズ」は、出しにくいでしょうか。

 それでは、次回をお楽しみに。

第5回 Micro55mm

 これもまた、伝説の1本になっているのでしょう。

 最新のデジ一では、マクロAF60mmに専用アダブターをつけて、フィルムのデジタル化が可能だそうで、ネガも設定で反転させることが可能とのこと、デジタル暗室のためにスキャナーを買おうか考えていた人には、朗報となっています。

 しかし、これは、元はフィルムのコピーをフィルムで撮るために考えられた技術で、それはMF55mmに専用アダブターをつけて、フィルム(ネガ、ポジともか)をコピーすることが可能となっていました。

 その55mmこそが、Micro55mmf2.8、現行販売ラインナップとして残るMFレンズです。多分間もなく手に入れるでしょうが、現在は専用エクステンションチューブのみです。

 このレンズは、非Aiの時代にはf3.5で、これは現在所有しています。これも等倍まで写すには、専用のエクステンションチューブが必要で、レンズ購入時には所有していませんでしたが、105mm用のものと2本セットで出ており、即買いました。過去記事のとおり非Ai105mmf4も手に入れたので、どちらも主を得て、現在使用されます。

 性格としては標準系マイクロレンズで、また等倍までマクロ撮影も出来ることから、標準レンズとしても、マイクロレンズとしても使用可能で、旧式機には重宝します。勿論エクステンションチューブも含め富士山はありますが、旧式フォトミックについては懐疑的であり、基本アイレベルを使用することから、あまり重要ではありません。

 ただ、あまりに安く手に入れてしまったので、状態はあまり良くなく、光学的には少々難のある個体です。まあ、その時代のレンズを手に入れた、そこがやはり重要なのでしょう。

 こうもクラシックレンズを手に入れると、最終的には、あのデジカメが欲しい、という話になるのでしょうが、本体ばかり買ってしまっても、着けるレンズが少なければ、あまり役に立ちません。もう少し、レンズが満足出来る域に達してからでしょうか。

 それでは、次回をお楽しみに。

第4回 F6

 それは、最後のフィルムカメラとなっています。

 私の写真の腕は、初心者ではありませんが、お世辞にも上級者とも言えません。そのため、プロ用の道具は使う資格が無いと、最高の機器では無く、中級者に似合う道具を使用していました。

 そのため、N社の一桁機は、やはり上級者用、まだ早いと、1つ下のグレードを使用していました。それは、フィルムからデジタルに移行した、ここ20年近くそうでした。

 確かに、デジタル一眼の能力は上がり、一部のカメラは「中判カメラ並み」とも評されるまでになりましたが、私は未だデジタル・フィルム併用を続けています。フィルム機も、当分続けられる位予備機もあり、純正品のパーツの供給も続いており、その辺は安心だと思っていました。

 しかし、これも整理が進み、遂に部品はF6以外は供給が中止となり、店頭からも商品が無くなることとなりました。そのため、オークションも探し、一応は解決は見たものの、今後それを続けることに疑問を感じ、今ある分はそのままで、今後どうするべきか考えるに至り、遂に一桁機に手を染めることとなりました。意を決し、F6を購入、現在撮影試験中となっています。

 しかし、AFの設計は、恐らくD2やD200と同時期の設計で、フォーカスポイントのカギカッコが、画面中央を中心に11か所、勿論それ以前のAF機よりは進歩していますが、最新のデジ一に比すると、少々物足りない感じはします。そうでしょう、発売は遙か昔から、ファームウェアは改められているようですが、ハード面は何も変わっていません。

 それについては、多分F7やF200は、設計も行われたのでしょうが、今のフィルム機の流通の現状から考えて、仮に新型機を発売しても、商業的に成り立たないと推定されることから、結果発売されていません。もう、フィルムの時代は終焉を迎えつつある、といえます。そうでしょう、フィルムメーカーも軸足はデジタルであり、フィルムは生産を縮小、リバーサルは市販が2種で、ネガではフィルムを使う意味も無く、もう高速シャッターも現実的ではありません。本当に一部の人の道楽となりつつあります。

 ただ、N社も新発売のレンズはEレンズと変わり、F6では使えません。F7は絶対無理ですが、電磁絞り対応のF6E位は期待したいのですが、難しいのでしょうか。全ては「商業的に成り立つか」に行き着きますが、どうかご検討を。

 それでは、次回をお楽しみに。